植山遊子『Woman In Love』
YUKIE『LOVE AFTER LOVE』
- R&B系SSW:YUKIEが坂本龍一主宰のGÜTレーベルから97年に発表した1stアルバム。ajapai名義やテイトウワ・小日向歩と組んだ「SP1200 Productions」でも知られる森俊彦が全面プロデュースを担当した、N.Y.制作の1枚。
- 本作はまずYUKIEのソングライティングが良い。日本語のセンチメンタルを大切にした詞曲には、単なる欧米の受け売りでないR&Bの萌芽を感じる。特に長いタイトルがそのままサビのリフレインになる①〜④は象徴的で、Camp Loによるラップがfeatされた②をはじめ名曲揃いである。
- その詞曲の良さを更に盛り立てるのが森俊彦の編曲で、スムースを基調としながらもダレないプロダクションは流石。リバーブの効いたTR-808のスネアで花火の憧憬を表現する⑥、シンプルな編成ながら味のある⑧、パワーの籠もったタイトルチューンの⑩など聴きどころは多い。
1997/6/21 45m フォーライフ
- どんな風なやりかたをして
- こんなにも落ち込んでしまうなんて (featuring Camp Lo)
- ふれるといつもあたたかいもの
- いろんなものが見つかってよかった
- つぶ
- 花火
- Rose
- いっぱい手をつないでね
- 女の子
- LOVE AFTER LOVE
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YOU『カシミヤ』
- バラエティ・タレントとしてのYOUではなく……そして、フェアチャイルドにおけるYOUでもない。ジャジーかつしっとりとした曲調に、彼女の特徴的な声質が合わさった94年発表のソロアルバム。
- 元・Shi-Shonen・Real Fishの福原まりを中心に、藤原ヒロシ、フクシクミコ、斎藤ネコ等が編曲を担当。アルバム序中盤は心にスッと染み込み、かつゆったりとした浮遊感のある楽曲が並ぶ。力こそ抜けているが、押さえるべき所はしっかりと押さえる……という、絶妙なバランス感覚が素晴らしい。
- 後半はリズム隊が入りポップな楽曲が増え、最後の最後に後藤次利の作編曲による名曲⑩が待ち構えている。作詞は全曲でYOU本人が担当しており、楽曲の雰囲気を壊さない着実な仕事ぶりが伺える。
1994/10/21 41m ポニキャン
- カシミヤ
- あなたに会いにゆこう
- 横顔と星空と嘘
- いつかあの場所へ
- 緑の罪
- 夢
- 智恵子さんへ
- 初恋
- 愛したい
- 二回目のキス
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岩崎良美『月夜にGOOD LUCK』
- 1980年に18歳でデビュー、85年のヒット曲「タッチ」でも知られる岩崎良美が、古巣のキャニオンから移籍して発表した89年作14枚目。ソニー期で唯一のアルバムである。
- 当時チキンシャックのベーシストだったBobby Watsonと、マイケル・ジャクソン『Bad』への参加で知られるシンクラビア奏者:Christopher Currellを作編曲家として招集。 共に4曲を手がけており、良い意味で岩崎良美らしからぬアーバンなサウンドが展開されている。比較的ジメッとした重めの楽曲が続く中で、八神純子作曲の⑦⑪は一服の清涼剤か。
1989/9/21 51m ソニー
- 夏の扉
- Made in the Moon Light
- 月夜にGood Luck
- With You
- Blue Line
- 言い訳 ―A Good Excuse―
- 君の傍らの月
- 静かの海
- 硝子のカーニバル
- Night Wind
- Prologue
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山岡京子『夢のパズル』
- 現在は「山岡恭子」として他ミュージシャンのコーラス・キーボード等サポートも手がけるシンガーソングライターが、笹路正徳のプロデュースを受けて1997年に発表した1stアルバム。
- 作風としては奇をてらうでもなく、無駄にテンションを上げるでもない……ともすると凡庸なポップスと紙一重な本作だが、細部に手の行き届いている点が全く異なる。特に山岡の歌声はストレートながら、随所でのコブシ使いや裏声の抜き方が絶妙。笹路の編曲も③をはじめ丁寧な仕事ぶりで、「気の利いたポップス」と言うのがしっくり来る1枚。
1997/2/26 46m ポリドール
- お元気ですか
- 休日の昼下がり
- 夢のパズル
- 待つだけの時間
- 屋上
- 海辺
- 明日になれば◯か☓
- わからない気持
- 少しの勇気
- あなたの心になりたい
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詩子『be natural』
- 現在は彫刻家「木田詩子」として活動している彼女が、90年に発表した1stアルバム。抜群の歌の上手さとクオリティの高い楽曲が堪能できる、90年代AOR風ポップスの名盤。
- 作曲陣は後にユニット「largo」を組む内藤慎也をはじめ、熊谷幸子・安岡孝章・時乗浩一郎など総勢7組が参加。こうした作家を寄せ集めたアルバムは得てして捨て曲が多くなりがちだが、本作は総じて楽曲の質が高い。冨田恵一の④⑧は言わずもがなだが、その他にも詩子の伸びやかな歌声が映える楽曲がズラリと並ぶ。
- そうした楽曲の魅力を更に引き上げているのが、メリハリの効いた編曲の素晴らしさである。松本晃彦・鷺巣詩郎・冨田恵一が3曲ずつと、村松邦男が1曲で担当。各人の個性が活かされつつも、打ち込みポップスとしての目指すゴールが近似しているためか、全体的にまとまった仕上がりとなっている。
1990/9/26 46m ハミングバード
- 悲しみのHeavyRain
- Paradice in your eyes
- ホット・ライン
- グランドホテル
- I will be your voice
- Everything for you
- Moment
- Happy Birthday Broken Heart
- あなたを待つ時間
- Memory is love
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宇井かおり『JUST SIGHS』
- シンガーソングライター、宇井かおりが94年に発表した1stアルバム。朝の澄んだ空気が伝わる雪山のジャケットを、そのまま音像化してパッケージングしたかのような1枚。
- いわゆるGiRLPOPにありがちな、無理に盛り上げようとする派手なタイプの曲は本作にない。基本的にはしっとりとした楽曲群だが、かといって歌謡曲にありがちなベタでダレる感じもない。非常に良い温度感・清涼感を保ちながら楽曲は進行し、アルバム1枚で一つの風景を作り出す。聴いている内にジャケットの中の静寂の世界に入り込んだ気持になる。
- 新人のデビュー作としてはある意味で非常に勇気のいる作り方だが、本作に迷いはない。それを可能にしたのは宇井かおりのシルキーな歌声を活かしたソングライティング、そして岡本洋(ex.NOVELA)と安部潤(ex.FIELD OF VIEW)のキーボディストコンビによる編曲の妙だろう。
1994/3/24 51m ファンハウス
- Prologue
- 木枯しの便り
- Just Sighs
- MORE THAN WORDS
- Last Dinner
- これほどにせつない夜があるなんて
- 写真
- それだけの夜
- 約束の月
- 二人の行方
- Just You and I
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