野沢直子『はなぢ』
- 前年に『笑っていいとも』レギュラー、同年に『夢で逢えたら』がスタートするなど、芸人として売り出し中だった彼女が88年にリリースした1stアルバム。
- 全曲の作詞を野沢本人が担当。実在の芸能人の固有名詞がバンバン出る前半、ナンセンスな歌詞が炸裂する後半と、彼女の詩のキャッチーさには目を見張るものがある。また実在のキャクターを出す時も(今風に言うところの)Disではなく、テレビを見ていてパッと頭に浮かんだこと・関連して身の回りに起こったことをそのまま歌詞にしているのが面白い。野沢の歌唱もいわゆるヘタウマの良さがあり、楽曲のキャッチーさを損ねずにリスナーへ伝えている。
- 編曲は元スペクトラムの新田一郎が全曲を担当。ぶっ飛んでいる野沢の歌詞とは対象的に、堅実かつキッチリとした演奏で歌を支えている。この真面目と不真面目のバランスの良さこそ、本作を単なるお笑い芸人のアルバムで終わらせていないポイントと言える。
1988/5/21 39m ビクター
- おーわだばく
- なんてったってお笑い
- 13日の金曜日
- マイケル富岡の夜は更けて
- トモ子と呼ばないで
- スプラッター
- 恋のもうこはん
- アルプスの少女ハイジ
- 先生はミイラ
- えっち
- おーわだばく(オリジナル・カラオケ)
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水沢瑤子『あなたがいるから』
- 現在は本名の「波多江美鈴」として横浜の老舗バンド「スクラッチ」のボーカルを務める彼女が、「水沢瑶子」の芸名で92年に発表した1stアルバム。これぞトーラス・レコード!と言いたくなるような、ド歌謡ポップを聴かせる1枚。
- 全曲で作詞を大津あきら、編曲を岩本正樹が担当。①からリスナーをムーディーな世界に引き込み、そのまま覚まさせない構成となっている。対する水沢の歌唱力も抜群であり、楽曲のもつポテンシャルを120%引き出す歌いぶり。亀井登志夫作曲の佳曲③を筆頭に、TSUKASAの⑥、芹沢和則の⑦、Haward Killyの⑨などを十分に歌い上げている。
1992/9/23 48m トーラス
- ワインカラーのせつなさ
- 最愁夜
- グラデュエーション
- 恋の足音
- フォーエヴァー・フレンド
- 最後の笑顔
- 永遠を追いかけて
- タンバリン
- あなたがいるから
- あの凪ぎ風にさよなら
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つみきみほ『つみきみほ』
- 15歳で女優としてデビューし、並行して歌手としても活動した"つみきみほ"唯一のオリジナル・アルバム。凛々しさと清涼さを兼ね備えた歌声で、単なる「アイドル歌謡」とは異なる独特の存在感を放つ過渡期の名盤。
- 松本隆-細野晴臣の黄金コンビが手掛けた名曲④⑩を筆頭に、井上ヨシマサによる力作⑤⑦、山口美央子が絶妙な落とし所をみせる①⑥、突き抜けた八田雅弘の②など……ほぼ捨て曲なしと言える構成で、アルバムとしての流れも素晴らしい。つみきの歌声にも説得力があり、特に高音ファルセット・裏声の響きには特筆するものがある。
- 編曲は清水信之が4曲・松本晃彦が6曲を担当。文句の付け所のない仕事ぶりで、フックのきかせ方も流石の一言。松本の引き出しの多さには拍手を送りたくなり、清水による②大サビのアレンジには思わずガッツポーズしたくなる。
1988/8/21 40m ポニキャン
- おまじない
- 少年
- 星の人
- サヨナラのあくる日
- 楽園
- 森へ帰ろう
- エンジェルの苺わいん
- #
- CASTLE ON A CLOUD
- 時代よ変われ
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今野登茂子『24hours』
- PRINCESS PRINCESSのキーボーディスト、今野登茂子がバンドの活動後期に発表した1stソロ・アルバム。プリプリでは寡作(作曲はアルバム1枚に1曲程度)だった彼女だが、本作では全曲を自身で作曲している。
- コミカルな歌詞で展開豊かな①に始まり、重厚な③からのコントラストで泣かせる④、工藤順子の詩が情感をより一層かきたてる⑥、古き良き歌謡POPSを彷彿とさせる⑦、小西康陽の作詞によるセンチメンタルな⑧などを収録。1曲ごとに曲調が変わる(同じ曲調が続かない)アルバムだが、雑多な印象はなくクリアな仕上がりである(曲間の調整やイントロの導入が上手いからだろうか?)。
1994/4/1 48m ソニー
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松本伊代『MARIAGE〜もう若くないから〜』
- 80年代後半から脱アイドル化し、同年代女性へターゲットをシフトした松本伊代が91年に発表したキャリア最終作。彼女自ら執筆した同名小説とのタイアップ作品だが、企画盤ではなくオリジナル・アルバムと呼ぶに相応しい1枚。
- デビュー前の熊谷幸子が前半4曲の作曲を手がけており、中でも①③は瑞々しい熊谷メロディに溢れた名曲。また他の作家陣としてMAYUMI・崎谷健次郎・小西康陽が参加しており、特に小西のペンによるピチカート・マナーな⑦⑨は良曲である。松本の歌唱も耳に馴染む丁寧な仕上がりで、90年代OL歌謡の一つのメルクマールといえる。
1991/1/21 44m ビクター
- きっと忘れるから
- 恋は最初が肝心
- マリアージュ〜幸せになって
- a Primeur
- 魅惑の扉
- 予期せぬ出来事
- 交通渋滞
- 手遅れの告白
- カーマイン・ローション
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宝達奈巳『宝達奈巳』
- クラシックの素養を持ち、音大でケルトや琉球の音楽を学んだというシンガーソングライター、宝達奈巳が94年に発表した2ndアルバム。細野晴臣から「シャーマンが住んでいる」と称された歌声を軸に、一筋縄ではいかない摩訶不思議な世界観を構築した1枚。
- 神がかり的なシャーマン・テクノである①、独特の歌詞とブレイクが気持ち良い②と、冒頭2曲だけで十分に心を持っていかれる。壮大な⑨もアルバムのラストを飾るに相応しい佳曲。③は琉球古典、⑦は宮古民謡をそれぞれテクノに仕上げたカバー作。
1994/10/6 40m GreenEnergy
- 月の夢
- へび
- 干瀬節
- うつろひゆくは
- かの人は
- Fossils of Childhood
- 成山
- 雲の影
- To Lappland
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岩崎宏美『FULL CIRCLE』
- 1975年に16歳でデビュー、88年に結婚し益田宏美名義で家族愛をテーマとしたフルオーケストラ3部作をリリース後、離婚を経て名義を元に戻し発表した23thアルバム。プロデュースに13Cats(Cat Gray・沼澤尚・Karl Perazzo)を迎え、重厚な世界観を構築したLA録音の名作。
- やり過ぎとも言える1音1音への力の籠もり方で、楽曲構成・編曲共に高い水準を誇る「流石」な1枚。ソングライターとして佐藤竹善・藤田千章コンビのほかJane Child・塩谷哲が参加しており、当時13CatsがプロデュースしていたSing Like Talking関連作とは姉弟関係にある。
- Jane Childによる深遠な⑤から、シングル・カットされた佐藤・藤田コンビの⑥、Cat Gray作曲のハジけた⑦への流れは今作のハイライト。他の楽曲もCatの唸るシンベ・沼澤の乾いたスネアが冴え渡り、10代の頃のシングル④⑨をInterludeにできる程の密度がある。⑪はRoberta Flack feat. Donny Hathawayのカバー。
1995/11/22 63m ビクター
- FULL CIRCLE
- BIRTH
- 時間の早さに
- ロマンス
- NEVER BE THE SAME
- 朝が来るまで
- DREAM ON
- 潮風がつぶやいて
- 想い出の樹の下で
- EXTRAORDINARY
- BACK TOGETHER AGAIN
- ONE DAY,SOME WAY
- 窓
- FULL CIRCLE
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