相田翔子『JOIA』
- Wink活動停止後に発表された、96年作のソロ1stフルアルバム。全曲を自身で作曲し、元アイドルとは思えないアーティスティックな音楽性をみせた名作。
- なんとあの「マシュ・ケ・ナダ」で著名なSergio Mendesが4曲で編曲を担当。そのことからも分かる通り、本作は全体を通してボサノバを基調としたワールドミュージック的な作風になっている。残りの6曲を担当したBen Wittmanもニューヨークを拠点とする人気ドラマー・プロデューサーであり、⑤⑦等そつがない仕事ぶりを聴かせてくれる。
- しかし豪華編曲陣を起用しても、肝心の楽曲が良くなければ単なる「ボサノバのまねごと」で終わってしまう。本作がそこに留まらないのは、相田翔子の非凡なソングライティング・センスのおかげである。派手なことはしていないのだが、②に代表されるメロディの飛ばし方やフックの作り方には特筆すべき点がある。楽曲をただ単調な、つまらないものにはしたくない!という思いが伝わってくる。
1996/5/25 46m ポリスター
- Do-sol
- JOIA
- サヨナラしかあげない
- i Julia
- AFRICA
- Vellrina-真珠-
- CORACAN-コラソン-
- 魚になりたい
- i Julia -inst ver.
- Blue Lagoon
その他のアルバムはこちらから
高橋洋子『9月の卒業』
- 今ではすっかり「エヴァンゲリオンの人」になってしまった高橋洋子だが、そんな彼女の初期を代表する93年リリースの2ndアルバム。全曲を彼女自身が作曲(作詞は田久保真見との共作)した、後にも先にも唯一の作品である。
- ハイトーンボイスで歌い上げる⑤⑧⑩、無国籍調のメロディで言葉を畳み掛ける③⑥、トラディショナルな音楽を上手く吸収した⑦⑪など……振り幅の大きい楽曲が収録されていながら、1枚のアルバムとして違和感がなく、かつどの曲もクオリティが高い。後に「YO!キタロー」としてコンビを組む中村キタローと柿崎洋一郎を中心に、ライオン・メリィや安西史考ら編曲陣の活躍も目立つ。
- 楽曲の緩急に応じた高橋洋子の歌い分けも素晴らしい。ハイトーンで声を張る際の上手さは言わずもがなだが、声を張らない歌い方の時にこそ彼女の上手さが際立つように感じる。
1993/8/25 54m キティ
- 3人ハッピーエンド
- Family
- 眠れない夜はため息が踊る
- 羽根枕
- 例え全てを失くしても
- ゆらめいて
- 祈夜
- ブルーの翼
- Little Bird
- 9月の卒業
- みんなおやすみ
その他のアルバムはこちらから
加藤いづみ『テグジュペリ』
- GiRLPOPの代表的存在であり、近年はももクロをはじめ多数のコーラスサポートを務める加藤いづみが91年に発表したデビュー・アルバム。それまで青春ロック系の女性歌手をプロデュースすることが多かった高橋研が一転、封印を解くかの如くポップに傾きセンスを全開にした1枚。
- (彼のプロデュース作は大抵そうだが)ほぼ全ての楽曲で高橋が作詞・作曲・編曲を担当。アコースティックな音色を主軸に据えたアレンジで、ストリートに潜むメルヘン・ファンタジックを切り取っている。歌詞・メロディ・演奏の全てが揃った大名曲②を筆頭に、④⑦⑧など加藤の純朴な歌声が活きた楽曲が並ぶ。
- また高橋の十八番である、サビの印象的なフレーズで楽曲をまとめる手法は本作でも健在。ほぼ全ての曲でタイトル名がそのままサビになるのが面白い。
1991/5/20 44m ポニキャン
- ウサギの住む街
- Zero
- 屋根の上で
- ナイチンゲイル
- Moon River
- 雨が降る靴
- もう少しお金持ちなら
- All I Want Is You
- アビニョン橋を渡って
- 空飛ぶカウボーイ
- ウサギの住む街(Reprise)
その他のアルバムはこちらから
川村かおり『ZOO』
- ロシア・日本のハーフでモスクワ出身、当時17歳だった川村かおりが88年に発表したデビュー作。思わず「和製スザンヌ・ヴェガ」と形容したくなるような、内省的な世界観を巧みに表現した好盤。
- 作曲・編曲は(当時はまだ「ECHOESの」だった)辻仁成が全曲で担当。後に多数のカバーが生まれた名曲②の存在は大きいが、それ以外の楽曲でも辻の力を抜かないプロデュース・ワークが光っている。①③⑥など少ない音数のシンプルな曲、⑦のようなバンド・サウンドの両方にセンスの良さが伺える。
- 37分というトータルタイムからも分かるように、1曲1曲が無駄に風呂敷を広げずコンパクトな点にも好感がもてる。作詞は川村と辻が半分ずつを担当しているが、共に見えている世界観が似ているのか、アルバムとしてのまとまりは強い。若干青臭い歌詞も、サウンドの方向性と上手くマッチしているため違和感がない。
1989/10/21 37m ポニキャン
- Sweet Little Boy
- ZOO
- からっぽのフィルム
- Russian Blue
- 365日の戦争
- Paradise City Blues
- Winter Mute
- Kids
- You've Got A Friend
- 真っ白な月 (Moon On The Destiny)
その他のアルバムはこちらから
植山遊子『Woman In Love』
YUKIE『LOVE AFTER LOVE』
- R&B系SSW:YUKIEが坂本龍一主宰のGÜTレーベルから97年に発表した1stアルバム。ajapai名義やテイトウワ・小日向歩と組んだ「SP1200 Productions」でも知られる森俊彦が全面プロデュースを担当した、N.Y.制作の1枚。
- 本作はまずYUKIEのソングライティングが良い。日本語のセンチメンタルを大切にした詞曲には、単なる欧米の受け売りでないR&Bの萌芽を感じる。特に長いタイトルがそのままサビのリフレインになる①〜④は象徴的で、Camp Loによるラップがfeatされた②をはじめ名曲揃いである。
- その詞曲の良さを更に盛り立てるのが森俊彦の編曲で、スムースを基調としながらもダレないプロダクションは流石。リバーブの効いたTR-808のスネアで花火の憧憬を表現する⑥、シンプルな編成ながら味のある⑧、パワーの籠もったタイトルチューンの⑩など聴きどころは多い。
1997/6/21 45m フォーライフ
- どんな風なやりかたをして
- こんなにも落ち込んでしまうなんて (featuring Camp Lo)
- ふれるといつもあたたかいもの
- いろんなものが見つかってよかった
- つぶ
- 花火
- Rose
- いっぱい手をつないでね
- 女の子
- LOVE AFTER LOVE
その他のアルバムはこちらから
YOU『カシミヤ』
- バラエティ・タレントとしてのYOUではなく……そして、フェアチャイルドにおけるYOUでもない。ジャジーかつしっとりとした曲調に、彼女の特徴的な声質が合わさった94年発表のソロアルバム。
- 元・Shi-Shonen・Real Fishの福原まりを中心に、藤原ヒロシ、フクシクミコ、斎藤ネコ等が編曲を担当。アルバム序中盤は心にスッと染み込み、かつゆったりとした浮遊感のある楽曲が並ぶ。力こそ抜けているが、押さえるべき所はしっかりと押さえる……という、絶妙なバランス感覚が素晴らしい。
- 後半はリズム隊が入りポップな楽曲が増え、最後の最後に後藤次利の作編曲による名曲⑩が待ち構えている。作詞は全曲でYOU本人が担当しており、楽曲の雰囲気を壊さない着実な仕事ぶりが伺える。
1994/10/21 41m ポニキャン
- カシミヤ
- あなたに会いにゆこう
- 横顔と星空と嘘
- いつかあの場所へ
- 緑の罪
- 夢
- 智恵子さんへ
- 初恋
- 愛したい
- 二回目のキス
その他のアルバムはこちらから